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この学校の廊下は気を紛らわせるものがなく、タカセは先ほどの人物を思い出してしまう。

無理やり先ほどの光景をなかったことにしたかったが、それを阻む声が廊下に響いた。

「――――タカセッ！」

嫌というほど聞いた声。
懐かしい声から名前を呼ばれる感覚に、胸のときめきが蘇った。

タカセはその場に立ち止まったが、振り返ることはなかった。
振り返って目に入れてしまえば、受け入れがたい存在を受け入れざるを得なくなる。

ゆっくりと確実に近づいてくる足音。
タカセは思い切り走りだした。
受け入れてはいけないと、心が、身体が思ったからだ。