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ある日、その時に彼女だった奴に会いたいと言われて俺は彼女の家に向かった。
家に着くと、丁度今、家族は不在なのだと告げられ、ああ、そういうことか、と悟る。
結局、こういった色欲の感情では男女に大差はない。
電気を消した一室で、彼女の細い肩を押し、ベットに倒す。
ふんわりと女独特の甘い香りが漂った。
暗がりの中でわかるのは、高く甘い声と、今すぐにでも折れてしまいそうな細い身体のラインだけ。
「ねぇ…りょうすけっ、すき……すきよっ」
そう言って、ぎゅっと手を繋がれる。
小さい手の平に相変わらず細い指。
そういえば、大ちゃんの手ってこれより一回りぐらい大きくて、もう少し骨ばっていてしっかりとしてたっけ。
こんなに脆そうじゃなくて……温かかった。
「……りょうすけぇ、んぅっ…」
せがむように俺の名を呼ぶ女の唇にキスを落とす。
柔らかい…甘い。
けど、何かが違っていた。
大ちゃんとは違っていた。
どこか物足りなさを感じてしまい、どんどんキスは激しさを増していく。
キス特有の息苦しさと目眩のような感覚に襲われているというのに、気持ちが一向に追い付かない。
大ちゃんの唇って…どんな感触だったっけ。
もっと柔らかかったっけ。
それとも、もう少し硬かった?
ああ、一体自分はこんな時に何を考えているんだ…。
俺は、こいつのことが好きなんだろ?
だから、付き合ったし、こういうことだってしてきた…。
でも、今はどうだろうか。
今ここに好きという感情は
あるのか?
…いや、ない。
相手からの熱が伝わる程に気持ちは冷めていく。
なら、本当に俺はこいつのことが好きだったんだろうか。
初めから俺はこいつのことなんて……。
「……ッ、ん…」
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