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目の前に居るのは女だ。
大ちゃんじゃない。
そう頭では理解しているのに、思考が止まることはなかった。
大ちゃんってこういう行為をする時、どんな表情をするんだろう。
どんな瞳で相手のことを見るんだろう。
どんな声で愛を囁くんだろう。
どんなキスが好きなんだろう。
どんなことをしたら悦ぶんだろう。
どう気持ち良さに善がるんだろう。
俺が大ちゃんを追い詰めて快感の淵に立たせたとしたのなら、一体どんな風に羞恥を感じながら求め悶え、堕ちていくんだろう。
…堪らないな、ほんと。
「……はっ、」
長年の幼馴染みで何を想像しているんだと我ながらに馬鹿らしくて嘲笑う。
そんな俺を見て、こいつは不安そうに首元に腕を回し…それでも甘い猫なで声で口を開く。
「どうしたの?何か嫌なことでもあった…?」
「いや…別に」
「ふふっ、嘘。何かあったんでしょ?私が慰めてあげようか」
そういえば、こいつって俺より二つ年上で、下に妹と弟が居るからか根っからの姉貴体質だったんだよな。
だから、一時でも魅力を感じたんだろうか。
表情や雰囲気で相手の感情を読み取ったり、限りなく優しかったりするから…一緒に居て楽だったんだ。
どっかの誰かさんに似ていたから…。
「じゃあさ…今日は俺のこと名前じゃなくて上の名前で呼んでくんない?」
「…上の名前?」
「……嫌?」
「ううん、わかった」
暗闇の中に居て相手のことがよく見えないから、まるで大ちゃんとしているような、……そんな感覚にさせられる。
そんな状況で、自分をけしかける。
上の名前だなんて呼ばれても嬉しくはない。
こんな時になら尚更だ。
それでも、萎えることはなく、寧ろ今までに以上に良く感じてしまう。
「や、…っまだ…ッ、は…… …きもち、い…っんん」
声が脳内で変換されてしまう。聞き慣れたあの声に。
熱っぽい吐息混じりの声を俺の幼馴染みは発する。
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