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だって、この人は持ってる。
俺が持っていないモノを全て持ってる。
賢さも気配りの出来も、大ちゃんからの信頼や尊敬の意も。
それから、俺は大ちゃんに手を引かれてばかりなのに、手を引かれる事しか許されていないのに、この人は簡単に大ちゃんの手を引く事が出来るんだ。
いつま大ちゃんが友人だと俺に紹介してきた奴は大ちゃんと同じ位置に居た。
同い年だから歳で考えればほぼ同じ時間を生きてきた人だから、相手が大ちゃんと同じ位置に立っている事に何の不満も抱かなかった。
けど、この人は違う。
この人は同い年で、ほぼ同じ時間を生きてきた人のはずなのに、大ちゃんはこの人を自分より上の位置に配置している。
これを仕方無い事だと言いくるめられないし、それに何だが特別な存在と表されているようで嫌だった。
納得出来ない。
けれど、これはある意味で希望と呼んでも良いのだろう。
もしかしたら俺でも”そこ”に行けるかもしれないという…そんな些細な希望。
そんな希望を証明する存在は気に食わない。
…気に食わないがそれを望むが故に否定も拒絶も出来やしない。
「……凄い人なんだな」
「…!ああっ、そうなんだよっ」
こんなにも誰かの為に嬉しそうな笑みを浮かべる大ちゃんも気に入らない。
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