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「なあ…、まだ何もしたことないんだろ?」 「……え、はっ?」 俺の部屋のベットに持たれ掛かるようにして座っていた大ちゃんの正面へと行き、強く手を引く。    いきなりのことに驚いたのか大ちゃんは目を丸くして俺を見据えた。 そんなことは気にせずに俺はそのまま手を掴み、指と指を絡める。 「こうして…手を繋いだことは?」 「………っ、」 「じゃあ……」 次に、空いている方の手でソッと大ちゃんの頬をなぞるように手を添えた。 「こうして、体に触られたことは?」 「山田…いい加減にっ」 「こうして……」 早く、早く…認めろよ。    そしたら止めてやるから。    だから、認めろよ。 早く…、早く。    俺は同じ目線に居る。    年の差なんて関係無くなるぐらい、俺達は同じ位置に立っているはずだ。    だから、餓鬼じゃないし、大ちゃんの弟分でも無い。    俺はそれをハッキリさせたかった。    ただそれだけだった。 「こうしてさ…キス、されたことは?」 そう囁くように低い声で告げれば、次に自分が一体何をされるのか理解したのか顔を背けた。    でも、その行為自体が意味も無く、俺は頬に添えていた手を少し下げ、顎を掴んで、こちらへ向かせ直す。 見開かれた黒目勝ちな瞳が俺を映すと同時に、唇には柔らかい感触が広がった。 「……っ、ん…ッ」 それも一瞬のことで、大ちゃんは勢いよく腕を引き、俺は突き飛ばされた。 「…っはあ、いい加減に…しろッ」 肩を荒く上下に動かしながらも大ちゃんは俺をキツく睨み付ける。    こんな事は初めてだった。大ちゃんに限らず、誰からもされたことはなかった。 こうも強い怒りを宿した瞳で睨まれるのも、ハッキリと拒絶されることも生まれて初めてのことでどうしようもなく困惑した。 「次したら…っ、いくら山田でも許さないからな…」
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