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それからあっという間に数日が経ち、大ちゃんが俺の家へやって来た。
あからさまに気まずそうな雰囲気を醸し出しながら、俺の目を見つめて大ちゃんはやっぱり笑って見せる。
そして、申し訳なさそうに「この間のことはごめん…」と、そう言った。
意味が解らなかった。大ちゃんは何も悪くないというのに謝るなんて。
けど、これがいつも通りの
大ちゃんの姿だった。
自分に決して非が無かったとしても、自分の非を自分で見つけ謝りに来る。
そんないつも通り過ぎる行動をとった大ちゃんを見て、俺の頭も冷えていった。
「別に、山田のことが嫌とか嫌いとか全然そういうわけじゃなくて…!」
「いい、…わかってる。俺も悪かった。酷いことして」
「ううん…っ」
まるで犬のように頭を振り否定をする。
自棄になっていたとしても酷いことをして傷付けてしまったというのに俺を庇うなんて、馬鹿だな。と呆れと安堵で気が付けば口元が綻んでしまった。
「もう…大丈夫なのか。怒ってたり、しない?」
「ああ…、もう頭も冷えたし落ち着いた」
「そっか、良かった…!」
もう大丈夫なのか。
怒ってたりしないのか。
それを気にしているのは…気にするべきなのは俺のはずなのに。
大ちゃんと居るといつもペースが乱されてしまう。
けど、これもいつもの事。
喧嘩をして、互いに謝り、最後に大ちゃんが飛び切り嬉しそうに微笑むんだ。
だけど、これが全てのキッカケだったと後に気付くことになる。
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