龍と巫女    もっT様 [link:ilst_view?w=22479965]

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桜の木の下で穴を掘っている父様を見つけた。 穴は人1人入れるくらいに掘ってある。書物を渡すと父様はそれを箱に入れ土の中に埋めた。 『父様、首飾りとあとこの箱は…?』 「首飾りはお前が持っていなさい。母さんがきっとお前を守ってくれるよ。」 父様の言葉にそっと首飾りに両手を合わせ祈りを捧げる。 「その箱の中身は龍玉だね。」 『父様はどういう物か知っているんですか?』 「それは代々この神社に尽くす女性に受け継がれてきた物だよ。母さんが亡くなって初めて見たな~。書庫にあったのかい?」 『はい、母様の首飾りの横に。この前片づけをした時にはなかったと思うのですが…。』 父様は何か考えているのか右手を顎にあて黙りこんでしまった。 しばらくすると父様は私を呼び桜の根元に座るよう促す。 「お小夜はこの神社に纏わる龍の話は知っているね?」 『はい。小さい時に村の人から聞きました。国を瞬く間に焼き尽くし暴力の限りを尽くしたと。それと1人の巫女により封印された。』 「そういえば父さんは一度も話したことがなかったなぁ…。村の人から聞いた話とは違う話をしてあげよう。これは代々神主に就いたものが語り継いでいく話でね。」 そう言うと父様は空を見上げる。 「昔この地は人の民と白き龍が共生していた。龍は民を守り、民は龍を崇めていた。平穏で豊かになっていく集落は徐々に余所から移ってくる民もいたため大きくなっていった。龍は時々人の姿になり龍だということを隠して民と交流していた。」 『聞いた話とはかけ離れてる…』 「そして龍は1人の巫女を好きになった。」
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