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「お小夜は書庫に行き大事な書物を持って来ておくれ。それと母さんの形見の首飾りも一緒に。」
『わかりました。』
神社の一番奥にある書庫まで走って行く。
小夜はよくこの書庫には来て読んだりしていたためどの書物が大切なものか知っていた。
手早く分別しまとめると、部屋の隅にある箱の所まで歩いて行く。
母様の首飾り…大小の白い球が連なって繋げられており一際大きな球が1つついている。
母様は私が小さい頃に流行病で亡くなった。
村に流行り何人もの病人がでて看病しているうちに母様も病に侵されてしまったのだ。
しかし母様はそんな体になりながらも看病をやめなかった。
病人を1つの家に集め1人で頑張ったのだ。
しかし体力が消耗し心労も積み重なった母様だけ治らなかった。小さい隙間から見た母様の姿はやつれ肌も血の気がなく白くなっていた。
扉越しに聞いた母様の言葉を今でも覚えている。
『お‥小夜…ごめんね…わ…たしが弱いば…かりに…あ…なた…や…とう…さん…に…さみ…し…い思いを…。』
『そんなことないよ母様。村の人を助けた母様は大好きだよ。それに母様が元気になるように家の周りにはたくさんの人達が祈っているよ。』
『そ…う。…お小夜…あなたも…村の…た…めに…』
そこでもう母様の言葉は二度と聞けなくなった。
父様が扉を少し開け中を確認し泣き崩れた。
父様には話していたのだろう。自分はもう長くないと…。次の日には家を焼き母様を火葬した。
高く燃えあがる熱き炎は母様の心の優しさのようだった。
幼い私には辛い現実だったが村の人達が娘のように可愛がってくれ寂しさを感じさせないように育ててくれた。
強い母様のようになりたいのが私の夢。
ふと母様の首飾りの横に目をやると木箱が埃をかぶって置いてあった。箱の蓋には龍玉の2文字と、蓋の端に文字が書かれたお札が貼ってある。
『あれ?この箱前からあったかな…』
とりあえずその箱も父様のところへ持って行くことにした。
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