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「沙、…美……、きてよ。」
名前を呼ばれた気がして目を開けると、そこにはいつもと変わらぬ親友の姿。
「あ、美沙やっと起きた!早く学校の準備してよねぇ、また遅刻して先生に叱られちゃうじゃん。」
ぶつくさ文句を言いながら、私の制服をクローゼットから出す結衣。
そっと自らの唇に触れてみる。
どうも夢を見ていたらしい。
よく思い出せないけれど。
幸せな夢だったのかな。
ふと、机の上のカレンダーに目が止まった。
今日は…あぁ、そういえば。
「ゆい、」
笑って、私。
「1年、おめでとう。」
こんなの、柄じゃないけど。
「それから、ありがとう。」
照れ臭くなって少し早口になってしまった。
それでも、ちゃんと伝わったようで。
「…っこちらこそ!」
振り向いた彼女の顔には、私の大好きな笑顔が広がっていた。
私だけの、結衣。
ベッドから降り、彼女を正面から抱きしめる。
昔はそんなに変わらなかったハズ身長差も、ここ1年程で私の方が若干高くなった。
結衣を包み込むには、ちょうどいいかな。
「ちょ…美沙…!」
いきなり大声を出したかと思えば、何故か体も離されてしまった。
「ちょっと美沙!時間、ヤバいって!あぁもう早くして早く!!私先に玄関で待ってるから、じゃっ!」
バタンと勢いよく扉を閉められしばし唖然とする私。
時間は…確かにちょっと危ないかもしれないが、いつもより早いくらいだ。
まぁおおよそ予想はつく。
真っ赤になって飛び出した美沙を思い出し、1人で思い出し笑いとやらをしてしまった。
あぁ本当に。
「傷付けて良かった。」
さて、美沙をそんな待たせる訳にはいかないから、早く支度をして迎えに行ってあげなくちゃ。
だれにもとられないように、ね。
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