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金属同士がぶつかった音の後に、宇田切の短い悲鳴が耳に響いた。
すさまじい威力の一振りに持っていた小刀を弾き飛ばされ、宇田切自身も吹き飛ばされていた。
「宇田切!!」
反射的に倒れた宇田切に駆け寄ると、その右腕からは血が流れていた。
「大丈夫か!?なんでこんな・・・・、下手すりゃ死んでたぞ!!」
俺が抱き起こすと宇田切は出血している右腕を押さえ、痛みを耐えるようにその表情を歪めた。
「殿・・・・・・・・、お逃げを・・・・!」
「・・・・・・・・・・・・なんでだ!!!!」
自分でも知らないうちに俺は叫んでいた。
その声に宇田切は驚いて俺の顔を見た。
「なんで今日会ったばっかりの俺にそこまでできる!!命を張れる!!俺なんかにそんな価値があるのか!?」
自然と口から言葉が発せられた。なんで、どうして、それだけを連呼しているとなぜだか目から涙が流れていた。
「それが“臣下”というものだからだ」
答えた声は毛利のものだった。
俺が反応して毛利へ顔を向けると、構えを解いて刀を降ろしていたが殺気のこもった両目は未だ俺に向けられていた。
「価値云々は関係ない。ただ器を見極め、己が上を行く者と判断し、信頼し身命を託す。我ら将兵が主君に求める物は価値ではない。天下をその手にすべき器と、志だ。
そのためなら、主のためなら我らは命を賭けられる」
毛利の言葉は数々の戦場を生き抜いてきた歴戦の勇士のそれに違いなかった。
わからない、天下をとるべき器なんて俺にあるとは思えない。
なぜなら俺は一般人だ。この十七年間、何一つ人と変わったこともなくただ平々凡々に生きていたただの高校生だ。
そんな俺がいきなり天下をとるなんて、無理な話だ。
そんな俺のために宇田切が命を賭けられるなんて、信じられない。
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