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次に俺の目に映ったのは、十字に重なる二つの刃だった。
縦にあるのは俺を斬ろうとする毛利の刃だ。
そして横にあるのはそれを防いだ俺の小刀。
防いだ?いや、なぜ防げている。
俺は何も考えずに前に突き出しただけで、刃を横に倒して防ごうとした覚えはない。
「・・・・確かに重いな、なかなかの一振りだ。だが――――」
え。
なんだ今の声。誰が言った?いや、誰でもない。今の声は間違いない。間違えようがない。
「――――龍の首をとるには、まだ足りぬ」
俺だ。俺の声だ。
でも俺は声を出していない。正確には自分から口を動かそうと思っていなかった。
だが俺は今、やけに低い声で、変な口調で喋った。
なんだ?俺の身体に何が起こっている?
「先ほどまでと雰囲気が違う・・・・・・・・。貴様、何者だ!」
毛利が飛び退いて声を荒げた。
何者だと言われても、俺は俺だ。上杉虎太郎だ。
と、言おうとしても口が動かない。腕を動かそうとしてもいうことを聞かない。
全身が俺の脳から伝わる指令を聞こうとしない。
すごく嫌な感覚だ。まるで誰かに身体を乗っ取られているみたいで。
「・・・・何者、か。だが貴様はすでに察しているはずだ」
また勝手に口が動いた。
なんだ、誰なんだ一体。俺の身体を動かしているのは・・・・・・・・。
「・・・・・・・・我が名は上杉謙信。毘沙門天の加護を受けし者也」
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