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上杉謙信。俺は今、確かにそう言った。
自分で言ったわけではない。俺ではないなにかが口を動かしただけだ。
だが毛利にも宇田切にも、俺が言ったように聞こえただろう。
「軍神・・・・・・・・!この状況で・・・・、覚醒だと!?」
毛利がよくわからないことを言ってうろたえている。
「なにを畏れる。最初から貴様は軍神の首を手柄にするつもりだったのだろう」
俺は挑発するように毛利を鼻で笑った。何度も言うがこれは俺の意思ではない。
「と、殿・・・・・・・・。本当に、お戻りになられた・・・・」
宇田切がさっきよりも少しだけ大きい声を、しかしまだ聞こえにくい声を発した。
俺はそれに反応して振り向き、倒れている宇田切に目をやった。
「・・・・・・・・ずいぶんと可愛らしくなったではないか、定満」
「え!?な、な・・・・・・・・!」
宇田切が肩を震わせ、一瞬で顔を真っ赤に染めた。
校内一のモテ男に同じようなことを言われても顔色一つ変えなかったのに、俺ならいいのか。
「・・・・・・・・おっ、おお、お戯れを!」
「ふっ。相も変わらず度を超えてまじめな奴よ。だがそれでこそだ」
相も変わらずって・・・・・・・・。俺こいつのことほぼ知らないに等しいんですけど。
やはり今俺の身体を動かしている意識は、まったく違う人間らしい。
この身体は今は上杉虎太郎の物ではない。名乗った通り、今は上杉謙信の物だ。
実感している。直感でわかる。上杉謙信が俺の中にいる。俺を動かしている。
本当に俺は上杉謙信の生まれ変わりだったのか・・・・?
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