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「そのような斬れぬ刀を持って・・・・、勝ったつもりかぁ!軍神!」
毛利が一気に俺に向かって飛び込んできた。
まずい、殺される。
そう思っているはずなのに、俺の身体は微動だにしない。
畏怖などによるものではなく、これは――――余裕。
俺の身体を操る上杉謙信は、奴に対してまるで幼い子供を見ているかのような余裕を見せている。
一人慌てふためいていた俺も、その余裕の意味を理解した。
閃光のような速度に思えた毛利の動きが、軍神の眼を借りると歩くよりも遅い速度に見えた。
スロー映像を再生させているかのように、動きの一つ一つを把握できる。
そして俺の首を切り落とそうとする鈍い鋼色が、西日を反射して妖しく光った。
「龍の首、取ったぞ!!」
雄叫びを挙げながら毛利は刀を大きく振るった。
それでもなお、俺の身体は一切動こうとしなかった。
手を動かして防ごうともせず、足を動かして避けようともしない。
もしかしてこのままなにもせずに斬られるつもりなんじゃないか?
そんなことを考えていたら、俺の口角が自然とつり上がった。
「・・・・・・・・・・・・笑止!!」
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