300人が本棚に入れています
本棚に追加
一閃。俺の目の前をなにかが横切った。
なんなのかはわからなかった。軍神の眼をもってしても、速すぎて見えなかった。
そして斬りかかってきたはずの毛利は俺の目の前にいた。
持っている刀は・・・・・・・・、刀身が半分なくなっている。
少し経ってから、その正体を把握できた。
それは俺自身の腕、七支刀を目に見えないほどの速度で振るった俺の腕だった。
毛利の攻撃と合わせるように、刀を横に振ったのだ。
その結果、毛利の刀だけに七支剣はヒットし、その刀身をへし折った。
折られた刀身は空高く舞い上がり、俺と毛利の間に落ちてきて地面に突き刺さった。
「・・・・・・・・・・・・こんな、ことが・・・・」
毛利は折れた刀身を見てがくりと膝から崩れ落ちた。
「言ったはずだ、足りぬと。相手の剣を見誤った時点で、貴様の負けだったのだ」
俺の口からそんな冷ややかな言葉が発せられると、毛利はぐっと唇を噛みしめて地べたに正座した。
「・・・・もはや私に刀を握る資格なし。斬られよ、謙信公」
き、斬られよ!?斬る!?俺に殺せってこと!?
ざけんな!俺を人殺しにさせる気かこいつ!殴り合いの喧嘩もしたことない俺にそんなんできるかよ!!
だがいくら俺が叫んだとしても、今の俺は上杉謙信。上杉虎太郎の言葉は届くはずもない。
「・・・・・・・・我は貴様を斬らぬ」
え・・・・・・・・?
届いた?俺の言葉を代弁した?
よくわからないが、上杉謙信は刺客を斬ることを断った。
助かった、これで殺人罪で朝の新聞記事に取りあげられずに済む・・・・・・・・。
最初のコメントを投稿しよう!