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目を覚ますと俺は辺りを見回し、そこが学校であることを確認した。
時刻は午前八時二十七分。もうすぐ予鈴がなるこの時間になると、さすがに教室には生徒の大半が入っている。
急になぜか身体に変な浮遊感を感じた。夢の中で馬を走らせていたせいだろうか。
今まで何度もあのような夢は見たが、こんな症状が表れたのは初めてだ。
気持ち悪い。吐きそうになるような不快感はないが、異様に気分が悪い。
保健室に行こうかと席を立った瞬間、俺の前に赤髪ショートカットの小柄な少女がひょこっと姿を現した。
「トラちゃん。顔真っ青だけど、大丈夫?」
幼なじみの里見義乃が俺をあだ名で呼び、心配そうに顔をのぞき込んできた。
正直、俺と同じ十七歳、高校二年生にはまるで見えない。小学校高学年と言ってもなんとか通用する幼さだと思う。
「わりぃ義乃。なんか気分悪くてさ、ちょっと保健室行ってくる」
「寝てたのに?」
「寝てたら気分悪くなったんだよ。例のアレ見たせいで」
「ああ、戦国武将の夢?」
そう、と俺は頷く。というよりさっさとどいてほしかった。早くしないとホームルームが始まって保健室に行くのが面倒になる。
そんな気持ちを知ってか知らずか、義乃は俺の前から一歩も動かず腕を組んで唸っている。
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