その夜2

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 ガサガサ……。  キムがダッシュボードのボックスから、チャカとコナを見つけ出す。  これらは車体本体とは別のルートで売りさばく。  ヤクザのクルマはいろいろおまけがついてくるので、含めるとけっこうなカネになるのだ。 「他になにかないかな」  キムが後部トランクを開けた。 「!」  なんと、素っ裸のオンナが手と足、そして口にはガムテープを貼られて押し込められていた。  オンナの体には擦り傷、あざ、噛み痕などが残っている。 「さては変態どものオモチャにされたか」  キムはクルマにあったチャカに弾を込めると、セーフティを解除し、オンナのこめかみに銃口を向けた。 「こんなオマケはいらんわ」  オンナが目をあけた。  瞬時に事態を悟ったようだ。  しきりに首を振り、懇願の表情で命乞いをする。 「そのまま眠っておけばいいものを…」  キムが撃鉄を起こし、トリガーを絞ろうとした、そのとき―― 「待て」  黒岩がとめた。 「なんだ、ホトケゴコロってやつか」  今更…と片頬をゆがめてあざ嗤う。 「おれが殺す」  黒岩はガムテープをはがし、手足の縛めを解くと、オンナをひょいと担ぎあげた。 「殺すんじゃないのか」 「一週間後だ」  短くいって黒岩は停めてあったCX-5に乗り込む。 「そうか。せいぜい楽しめ」  キムの皮肉な笑みを受け流し、黒岩は裸のオンナを助手席に乗せて走りだした。
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