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「ごめん、わかんないや」 頭を掻きながら俺が謝罪すると、彼女はどうでもよさそうに「そ」とだけ言い、ボールを持ったまま俺に背を向けた。 「じゃあこのボールは私の名前を思い出すまでは没収ね」 「えぇ?」 「クラスメイトの名前忘れるなんて過瀬くんひどーい」 と、絶対に酷いと思っていないような声の抑揚で彼女は無表情を俺に向けて、べぇっと舌を出した。 「また明日ね。過瀬くん」 「……うん、また、明日」 半ば呆気にとられながら、俺は去っていく見覚えのないクラスメイトに小さく手を振った。
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