1人が本棚に入れています
本棚に追加
※ちゅーあり
ジーニアスは床に直接腰を下ろし、険しい顔で書類と向かい合う鉄次郎を眺めていた。無意識に眉間に皺が寄る。
「また仕事かよ…」
仮にも恋人である相手が目の前にいるのにあまりに多忙、己と違って社会人であるため仕方ないのだろうか。今さらな事だというのに、怒りはもちろん呆れさえ芽生える
これがジーニアスと鉄次郎の自然体だ
文句を言って喚いたところで鉄次郎が機嫌を損ねるだけなので、仕方なく黙っていると欠伸がもれた。
小さな眠気を追いやり、ぼんやりと頭を掻く。鉄次郎の背中を身ながら、ふいに最後にしたのは何時だったかという疑問が過った。記憶を探るが、近いうちではなかっただろう。
鉄次郎の態度がこれなせいで、そういった雰囲気になる事はあまりなく。若いジーニアスと違って(かといってそう老けてもいないのだが)性欲が薄い。
最近は……もう結構な間していない筈だ
「(そういや、キスも何もしてねぇんだよなぁ…)」
一度考えだすと止まらないもので、欲望が次第に脳内を支配しだす。
「(キスくらいてぇ、な…それ以上もしてぇけど)」
愛し合っていれば身体なんて必要ないともいうが、やはり人間なら相応の欲求があると思う。しかし鉄次郎が仕事をしているのに、駄々を捏ねるわけにもいかない
「おい」
「ん、おぅ」
突如鉄次郎から声がかかり、どこか遠くに行きかけていた意識が引き戻される。あわてて顔を上げるといつの間に椅子から立ち上がったのか、鉄次郎が床にしゃがんでいた。
驚いて瞬きをした一瞬。鉄次郎が伸ばした手に視界が奪われ、気付けば唇へ軽い口付けが落とされていた。
「、なっ」
軽く触れ合っただけのそれは直ぐに離れ、鉄次郎は鼻先でしてやったりと笑う。
「そう見られてっと落ち着かねぇだろ」
ジーニアスの両目を被っていた手が、でこぴんを一発打って離れた。刹那、今度はジーニアスから数センチの距離を埋めた
――――――そういうことするから!――
((返せ!俺の我慢返せぇええ))
*************
後書き
前回の鉄次郎デレverです
最初のコメントを投稿しよう!