隣人

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 その日から私は彼女と毎日会うようになった。彼女はシンディと名乗った。私の名前がオニャピデだということも教えた。オニャピデ、シンディと呼びあうようになった。私の隣人でもあり、友人でもあり、妹のようですらあった。彼女はゴーストなどではなく、この町が栄えていた当時の彼女の残像だと思うようにもなった。彼女の残像が未来の私と何故か共鳴しているのだと思う。ゴーストを信じるよりは信頼できる推測だと私は考える。  ある日私は、彼女と話をするのに何か辞書のようなものがあるといいと思った。それを彼女に理解させるのに半日も費やしたが、ようやく彼女は裏口の扉を開けて、私の目を見て首を傾げた。私は勇気を出して廃屋の中に足を踏み入れた。からからに乾いた埃の匂いがした。本棚を見つけて近寄ると、分厚い辞書らしきものを見つけた。パラパラとそれを捲ると私にも馴染みのある言語がところどころ書き込まれていることに気付いた。きっと彼女の父親か母親が、私の先祖たちと会話をするために少しずつ書き込んだに違いない。  私は小躍りしたくなるほど嬉しかった。これでもっと上手にシンディと話ができると思った。振り向くと、2つ並んだベッドに人が寝ているのを見つけて背筋が凍った。死んでいるのではない。新聞にのっていた白人男性と、シンディに似た顔立ちの白人女性が眠っているのだ。彼等は私に気付くこともなく、苦し気な表情で眠っていた。私は辞書を持ったままそっと裏口へ出た。  恐らく私の推測は当たっていた。この町には残像が残っている。鉱山から漏れ出るガスが私に残像を見せているのかもしれない。
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