隣人

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 小さなシンディの首にかかる父の手は幼かったが、太い血管が浮き出ていて力強く、またシンディの細い首よりもずっと大きく見えた。シンディの体がやがて震え出す。母が父の肩に触れると、父は歯を食い縛りながらも力を抜いた。母がぐったりと力を失くしたシンディを胸に抱き寄せた。シンディの浅く早い呼吸の音が聞こえる。ツミビトの欺瞞。それは神の教えに背いた悪魔たちの偽善的な慈悲だった。  私の身体に悪寒が走り抜けた。私はその時全てを知った。この町を見下ろした時の既視感。私の可愛い隣人、私の大事な友人、私の愛した妹は、私自身であることに気付いてしまった。両親が私を連れて家を出た。ベッドに残されたふたつの遺体も私の両親なのだ。私にオニャピデと名付けたのは、父なのか母なのか、シンディなのか、それとも私自身なのだろうか。分からない。おかしいと思った。私は両親に似ていない。私は白人なのだ。咳が止まらない。私はいつまでも咳き込み続け、寒気に身体を震わせ続けた。やはりいつまでも咳が止まらなかった。
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