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「今日はみなさんに私の大学時代の話をしましょう、、」
校長がそう声を発したのと同時に、みんな頭を背もたれに持たせる。寝るなとかいうなら、こんな映画館より良い椅子やめろ、と言いたい。
「おい、」
後ろから声をかけられる。振り向くのが面倒だから、少し首をずらし反応する。
「お前さ、大学でるの?」
この時期になればそんな噂も良く回る。親同士のネットワークなのか、ただのデマなのか。とにかく厄介なことに変わりない。
「さあ。悩んでる。」
「あぁーあ。そーやってはぐらかすなよ。決めてんだろ?お前が出たら、ファンの子泣くぜ?」
こいつは、高校からの友達。
良い人だけど、信用性にはかける。いや、きっと悪気なく漏らす。でも、悪気がないから厄介なんだ。
また、きちんと前に体制を戻して、話を遮った。
寝ようか迷っていると、コツンと、肩に頭が当たる。シャンプーの匂いがフワッとし、少しゾクッとした。
校長の話もまだまだ続きそうだ。折角だから寝るか。そう思い、その頭に自分のをもたせる。
久々にゆっくり眠れた気がする。心地よかった。
もそっと、頭が動いた。どうやらお目覚めだ。
「ん、、あ、ごめん。起こした?」
少し掠れた声が、いつもより近くで聞こえた。
「いや、よく寝れた。」
そう言えば、柔らかい笑みを浮かべた顔が見えた。
彼は我が男子校でも、ファンの多い子だ。迂闊に馴れ馴れしくすると、後が面倒だが幼馴染の特権とでも言おうか。
またコトンと頭をもたせてきた。
「おい、お前の親衛隊に睨まれたくないから、よせよ。」
口とは裏腹に、頭が乗せやすいように肩を下げる。
「いいじゃん。特別。それにお互い様でしょ?君の親衛隊も怖いって。」
彼が頭を乗せたままこっちを見る。フワッとまたシャンプーが香った。
程なくして、校長の始業の挨拶は終わった。
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