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そんなこんなで学生にとっての身分証、学生証を突きつけられた湊は、ただひたすら謝り続けていた。
まずは、女の子だと信じて疑わなかった七宮 悠矢に。
次に、その珍妙格好により婦女誘拐犯の疑いをうっかりかけそうになった、清水 梓に。
「や、もういいから。つーかもう帰っていい?」
半泣きですがり付く湊の姿にすっかり引ききった七宮……いや、悠矢が己の学生証を仕舞い込みながら冷静に言った。
「む、七宮!我の職務質問はまだまだ続くぞ」
「勝手にしろや。俺は帰る」
職務質問という未知の体験に何故か目を輝かせている梓に、これが友人に向ける目なのかと疑いそうになる程の冷たい視線を送り、彼は帰路につく。
「待って!」
そんな悠矢の背中に、再び湊は声をかけた。
振り返った彼から、「何」と視線だけが返ってくる。
湊は彼に走りよると、胸元のポケットから一枚の名刺を出した。
「私、瀬田川 湊言うがよ!ここの管轄に最近なりまして。困ったことがあったら、遠慮せず連絡してきぃよ!」
そう言って、彼女はにっこり笑った。
その笑顔に吸い寄せられるように、悠矢の手が名刺を受けとる。
「はい、君にもね!」
同じように梓にも差し出された名刺。
そこには、彼女の携帯番号が記されていた。
二人はそれをポケットへとねじ込むと、顔を見合わせるのだった。
これが、三人の出会い。
数ヵ月後、彼らは友人となり、仲間となり、そして同じ屋根の下で過ごす家族となるのは。
はたして偶然か運命か。
(もしもし湊?)(またストーカーにあったから新居探してくんね?)(そう言う困ったこと違うがやけど!!)
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