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そもそも、大学生になりたいと願っていたわけではなかった。
ただ、周囲の進学率の高さだとか、一般的な将来の道を提示されたときに、大学と言うのは近年最もポピュラーな高校生の進む道に思えて仕方がなかった。
だからこそ、自分が大学に進むのだと信じて疑わなかったし、高校生三年生になってから配られた進路の調査表にも、適当に「いいかも」と思ったレベルの低めな私立大学を記入していた。
…………そんな瀬田川 湊は今、都内の警察学校を無事卒業し、道を歩いていた珍妙な学生らに職務質問をしている。
……いや、職務質問をしていただけなら良かった。
正式には職務質問をしてしまった結果、
陳謝していた。
「ほんまにごめんよぉぉぉ!!まさか、ちょっと変わった思考を持っちゅうだけのただの高校生やって思わんかったがってぇぇぇえ!」
彼女の頭を下げた先にいるのは、赤と黒の市松模様のフードをすっぽり被り、前髪で左目を、眼帯で右目をすっかりと隠してしまったブレザー姿の青年と、
「あとあと、ぜっっっったいに女の子やと思ったがよ!!だってキミ可愛いやんか!目とかくりくり!めっちゃ羨ましい!可愛い!!」
「…………謝る気あんのかテメェはよォ」
まるで水飴を散らしたかのような美しく輝く白髪に、艶やかな黒髪の覗くメッシュ。まつげが長く黒目がちな大きな瞳、薄い唇にポツンとある黒子が印象的なとても魅惑的な美少年。
彼らの手には、先ほど湊が提示するよう求めた学生証が握られている。
「ほんまにごめん!ええと、清水君と七宮君!」
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