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ぐりっ、と容赦のない痛みだった。
己の左目を髪の毛で、右目を六芒星の施された眼帯で覆った清水は、その耐え難い激痛から来る嗚咽をけして漏らさまいとぐっと口許を結ぶ。
「ふっ、甘いな七宮……!この程度で、我は屈っさぬ!」
ぶわっと滲んだ脂汗が、彼の我慢を全て無駄にしていることを、言うべきか言わぬべきか。
苦笑いをする湊は、七宮に向き直る。
「君、この子にナンパされたのかな?だめだよ、怪しい人についていっちゃ」
「…………ああ゛?」
まるで、小さい子共に「お菓子もらってついていっちゃダメだよ?」と諭すような、穏やかな湊の声。
それに反して、米神に青筋を浮かべた七宮。
瞬間、七宮は彼女の大きな勘違いに二つ気づいた。
まず一つ目。
「…………なに勘違いしてんのか分かんねェが、俺は男だぞ?」
昔から、女の子に見間違えられることなどザラにあった。
お店で「お嬢様」なんて言われるのは当たり前だし、下駄箱に男からのラブレターがぎっしりつまっていたバレンタインデーだってお馴染みだ。
だからこそ、中学生に上がった途端に、彼が人体の急所と言う急所の知識を網羅したことは当然の流れであったと言える。
どうやら、この婦警も自分を女だと思い込んでいるのは明らかであった。
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