■しばたたかせる女

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ミラーに写った顔をマジマジと見る。 やっぱり崩れている。 ファンデでおさえて、少しマスカラを塗り直したい。後は……リップも塗り直す。 化粧室にいれば、ささっと直すのだけれど、躊躇してしまう。 電車で化粧直しするなんて。 良い大人の私が?女子高生じゃあるまいし。なんて思う自分と、あなたに会うために少しでもきれいに繕いたいという自分が葛藤している。 電車内を見回せば、幸いなことに私を気にしている人はいない。てんでに新聞や本を読んだり、目をつぶって音楽を聴いていたり、寝ていたり。 やってしまおう。 ファンデはスムーズ。マスカラは、微妙に揺れる電車のリズムがうらめしく 危うくまぶたにまで塗ってしまいそうになる。電車で化粧をしている女子高生を少しだけ尊敬してしまった。
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