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再度鏡でチェック。
ん~。本当はビューラーでもう少し睫毛を立ち上げたいけれど、そこは我慢する。
元々、器用ではなく普段でもまぶたを挟んでしまうのだから、揺れる電車の中じゃあ絶対に挟む。
そんなふうに鏡とにらめっこしている間に、あなたが待つ駅の名がつげられる。
急いでグロスを唇に置き、何度かこすりあわせて、パっと開いたら電車がホームへと滑り込んでいく。
慌てて、膝の上に広げていたポーチをバックにしまうと、ちょうど目の前にあなたが立って、車内をのぞきこんでいた。
小さく手をふって開いたドアから降りると、頭の上から、おつかれさまと声がふってくる。
私は意味もなく何度も瞬きをして、あなたを見上げた。
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