第1話

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教室に足を踏み入れると一斉に視線を向けられた。ただの視線ではなく好奇な目。そんな視線を物ともせず藤宮は空き机に鞄を下ろして席に着いた。 「席、ここでいい?」 「あっうん」 隣の席、か。そうだよね、同じクラス者同士が隣に座るのは当然のこと。しかしこんなに落ち着きがない席は初めてだ。 藤宮ひなた。入学してすぐその存在は広まった。一際目立つ美貌を持つ女の様な男がいると。同じクラスになるのは初めてだが、遠目から見ても綺麗であることは一目瞭然だった。 でも、近づきがたい人。だっておかしい。どう考えてもおかしい。なんでセーラー服?アリなの?男子高校生がセーラー服ってアリなの? うちの高校は私立の中でも規則が緩いことで有名だ。百歩、いや千歩譲ってそのセミロングの髪は許してもその服装は許してはいけないでしょう、先生……! 関わりがないとそのような抗議の気持ちも忘れるくらい彼の姿は学校に溶け込んでいた。ーーが、同じクラスになって同じ委員会になって思った。やっぱりおかしいよ……!
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