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「望月さん、本好きなの?」
彼から発せられたのはごく普通の質問だった。
「まあ……それなりに好きかも」
「そうなんだ、俺も。なんか意外だね!」
藤宮には言われたくない、と反論しかけて口をつぐむ。
「さん付けじゃなくていいよ」
「そう?じゃあ俺のこともひなたでいいよ!」
いやそこは名字だろう。じゃあの繋がりが分からない。
「……藤宮は」
区切りを付けて恐る恐る左隣を見ると、至近距離で栗色の髪と同じ色の瞳が私を捉える。
「なんでセーラー服着てるの?」
瞳が揺れた。不意を突かれたような表情に気まずさを感じざるを得ない。……あれ、聞いちゃまずかったかな。
「男はセーラー服を着ちゃいけないって法律でもあるの?」
「……は?」
「だってもったいないと思わない?この美脚を隠しておくなんて」
後悔を一瞬にして一蹴するような言葉がつらつらと出てくるのに唖然とした。言葉が出てこないなんて人生で初めてだった。
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