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「かわいいって作れるんだよ!」
そしてとどめを刺す一言。こんな状況でこんな言葉を言われることになるとは想像もしてなかった。
腹立たしいことに何も言い返せないほどに彼の容姿は整ってる。どうしてだろう。男が女装すればどこかしら不自然な部分があるのにそれが見当たらない。そもそも女装という表現が合ってるのかは分からないけれど。
「……努力してるの?」
「まあね。何もしなくて維持できるなら苦労しないよ」
それにしてもこれほど違和感なくセーラー服を着こなせるものなのか。元が男なのに努力の一言で済ませられるものなのか。……質問しても謎は深まるばかりだ。
「望月は?」
「え?何が?」
「何か努力してるの?」
夜はお菓子を食べないようにするとか、入浴後にストレッチをするとか、人並みに努力はしているつもりだけどこの彼の容姿を目の前にして言うのはなんか恥ずかしい。でもしてないというのもなんか悔しい。
どうしようかと頭を捻っていると不意に手が伸びてきた。
「……えっ」
藤宮の繊細な指が私の髪に触れている。あまりに自然な所作に現状を理解するのに数秒かかった。
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