第1話

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「綺麗な髪してるなと思って」 「な、ちょ、ちょっと、急に人の髪に触るなんて失礼なんじゃない?」 そうだよね、と藤宮は全く悪びれなさそうに放す。……なにこの人。天然でタラシ?タチが悪すぎる。 「そういうのって気軽にするものじゃないと思うんだけど……!」 「ごめんね。でも綺麗だと思うよ、本当」 自分が何を言ってるか分かってるのだろうか。こうも繰り返し容姿端麗な人に連呼されると流石に照れる。ただでさえ免疫がないのに。 「いい。もう分かった。十分です」 「伝わったならいいよ!」 冷たく言い放ったはずなのに返ってきたのは笑顔だった。 困った。こんな人初めてだ。 「望月さん?」 項垂れている頭上から聞こえてきた声に心臓が跳ね上がる。 「紺野(こんの)くん!」 「やっぱり。今年もよろしくね」 ふわりと笑いかける彼につられるように笑った。ああ、そうだ。私はこの為に……! 「今年もって?」 「ああ、去年も同じ図書委員だったの」 「……へえ、そういうこと」 去っていく紺野くんの後ろ姿に藤宮はぽつりと呟いた。
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