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「何事だ?人の屋敷を走るとは。」
「祇絋?!」
と鳳の主と霞子は驚いた。
「大変です、中納言様!左大臣様の文に―…!」
と少納言が駆け寄ってきた。
「柏少納言!!」
鳳の主は手紙を受け取り、読んでみると…
「!!」
「何が書かれているのでございますか?」
と霞子が主に尋ねた。
「………。15年程前に行方不明になっていた帝の妹の椿宮様が都にお戻りになられた。花見ではそのことも含め祝いの宴が開かれるそうだ。」
「――…。」
「ど、どうしたのだ?」
主は珍しく霞子が騒がないのに驚いた。
「いいえ!何でもありません、父上!ただ、宮様のようにいなくなられた母上もお戻りになられたら良いのに…と思いましてっ!」
霞子の母と鳳の主は、霞子が4歳の時に離縁した。それ以来屋敷に来ることも、手紙が届くこともなかった。
「…今日はこれで終わりにしよう。明日の花見に備えよ。」
「しかし、まだ―…。」
「父は仕事があるのだ!!早く部屋を出ろと言うておるのが聞こえぬか?!」
と鳳の主は怒鳴った。
霞子はいつもと少し違う父の態度が気になった。
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