1話 隠れ咲く

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父の寝所の方に向かうと、話し声が聞こえた。父と正妻の寅子の母の声だ。少し怒っているように思われる。 「殿は本気ですの?」 と寅子の母は主が冗談を言っていたかのように聞き返した。 「ああ、もちろん。」 と、主はそれに対して平然と答えた。 「姫君を嫁に出すのですか?」 「ああ。鳳家がお家潰しになる前にな…。」 霞子は訳が分からなかった。 私達?が嫁ぐ? お家潰し? 一体どういうこと――? 「――父上!!」 思わず大声を出してしまった。 「え。」 中にいた二人は驚いた。 「霞子!!」 主が急いで外を見た。 しかし、 「―…いない。」 辺りを見回してもいなかった。 「…ふふっ。寝言―…だったかもしれませんね。」 と寅子の母が冗談を言った。 「……後で見に行くか。」
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