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鶯の鳴く春。
―鳳邸―
『ホー、ホケキョ…』
と屋敷に響く中、一人の女房らしき人が主にやって来た。
「おお、紗(すず)よ。来てくれたか。」
「はい、兄上…いえ、殿。ご機嫌麗しく、何よりでございます。」
「今日でそなたが姫の世話をして10年が経つな。」
「はい。時の流れはとても早ようございますね。もうそんなに経つなど―。」
「そうだな…。忘れもしない。この日は――…」
『ホー、ホケキョ…』
一瞬、部屋が静まりかえった。
主は我に返った。あの日からもう10年という月日が経ったのかと。
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