二人の少女 ―結祈 夢を忘れる―

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ベットの上でほっとしたのも覚えてる。そうだ、その後、結祈は、不思議な経験をしたのだ。 目を覚まし、部屋の中がなんとなく赤っぽいのに気がついた。窓の外がぼんやりと赤い。カーテンを通してその光が部屋を染めている。 結祈はベットから下りて、窓のカーテンに手をかけた。机の上の時計は、午前三時になっている。丸い形の時計で、透明な入れ物の中には、クリスマスにちなんだ雪だるまやサンタ、振れば雪が舞うようになっている。去年のクリスマスプレゼントに母からもらった。今一番のお気に入りだ。だけど、時計そのものより、時刻の方が気になった。 午前三時 まだ真夜中だ。四月の午前三時に夜が明けるわけがない。 火事かな? それにしては、外は静かだ。部屋が明るくなるほど燃えているなら、誰かがとっくに気がついているんじゃないだろうか。人ではなくてもコロが吠えたりすると思う。コロは小型のミックス犬だけど、火と猫が大嫌いで、散歩中、通行人がタバコを吸っていても、吠えかかるぐらいなんだから。 おかしい……なんだか、とても変だ…… 結祈は思い切って、窓を開けてみた。 「あっ」 指の先が震えた。背中あたりまで伸ばした髪が、一本一本天井に向けて逆立つような気がした。 空が赤い。というより、暗い夜空から、真っ赤な分厚いカーテンが降りてきて、ゆらゆら揺れているようだ。 オーロラ…… 結祈は、本物を見たことがないけれど、写真なら何度も目にした。図書館で、『オーロラ写真集』を借りたことさえある。 オーロラ……いや、違う。 これはオーロラなんかじゃない。結祈は、はっきりとそう感じた。 目の前の赤い光は、とても毒々しくて少しも美しくなかった。写真集に書いてあった「思わずひざまついて、祈りたくなるほど神秘的」な雰囲気など全く感じられない。
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