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「三木さん、その屋敷に何があるんだよ」
「争いさ。……醜い争い」
すると屋敷に人影が数個現れ、暫くすると悲鳴が聞こえた。
十は驚き、思わず三木の腕を掴んで引き寄せた。
それに合わせて風景が動き、梅の木のある丘へと変わった。
「さっき君が刃物で私を刺そうとしたように、彼等も同じことをする」
十はハッとして、腕に抱いた三木を手放した。
三木は苦笑を浮かべながら十に向き直った。
「そう遠くはない未来だ」
「お前…未来が見えるのか?」
三木はこの質問には答えなかった。ただ笑顔を浮かべるだけで、何も反応しなかった。
「ま、こんな血みどろな話は止めて、君のお悩み相談にでも乗るとするか」
「は…?え?」
「さて青年よ、何を悩んでいるのかね?」
「いや、待てよ。話が飛びすぎてねーか?」
三木は十の両肩を掴んで方向転換させ、いつに間にか現れた椅子に座らせた。
そして三木は真向かいの席に座り、湯呑みと急須を出してお互いの湯飲みに注いだ。
「夢の中だぞ」
「まぁいいじゃない。気分でも楽しみましょうよ」
「……ふん」
腑に落ちないと言った顔をしつつも、湯呑みを手にとった十を見て三木は安堵の笑みを浮かべた。
そして、自分の湯呑みを手に取り茶を啜った。
「うーん。不思議不思議。焙じ茶の味ー」
「は?俺は煎茶だぞ」
「ま、夢ですから」
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