195人が本棚に入れています
本棚に追加
玉将、飛車、角行、金将、銀将、桂馬二駒、香車二駒を並べ、筆を持って白紙に四角を描いた。
その四角の中に、別の王将、角行、金将、銀将、香車を置いた。
「この並んでいる駒達は俺の仲間だ。で、四角の中駒は敵。駒の名前は動きと力を意味している。ちなみに俺は金将。飛車よりも権力はあるが、能力は飛車の方が上だ」
「成る程。で、君は敵方の王将を取りたいの?」
「ああ。が、角行が厄介だ。この角行は飛車の動きもできるし金将や銀将の動きもできる」
そう言って角行を動かした。
「所謂王将さんの右腕か。この人を先に取るんだね。この四角は何?」
「これは奴らの住まいなだけだ」
「え、住まいの中で敵を討ち取るの?」
三木は首を傾げた。
「狭くない?それに一気に討ち取るのは難しくない?」
「そうか。では、角行さんのスペックを教えて」
「すぺっく?」
「あー…能力。最近の角行さんと、王将さんとの信頼関係とか欲しいかな」
十は口元に手を当て角行について考えた。
「敵方の角行は王将に逆らえない存在で、絶対近くにいて討ち取るのは難しい。ただし、王将もかなりの凄腕だ。だが最近王将が角行を必要としていない事がわかった」
「なら、こちらに引き込むいい機会ですね」
「確かに能力的にはこの角行は欲しいかもしれない」
こうして十と三木は策を論じ合い、時間もあっという間に過ぎて行った。
すると何処からか人の声が聞こえてきた。
『おーーくだーー』
それはまるで山彦のように聞こえてきた。
『おきーーださい』
三木は瞬時に分かった。ニヤニヤと十を見ると、十が眉間に皺を寄せた。
「起こされてるよ。十君」
「んなの分かってるよ。だけど後ちょっと」
「でも残念。君の体が引っ張られてるよ」
「なっーー」
十はあっという間に砂となり消えて行った。
十の体が消えたのを確認した三木は、机上の駒達を見た。
そこには別の四角に敵方の角行と、十と思わしき金将と銀将があった。
そして別の四角には敵方の王将と金将と銀将があり、香車は外されていた。その代わり、味方の飛車と桂馬、もう一つ増やした金将と銀将が置かれ、飛車が敵方の王将と向き合っている形になっていた。
死角の外にはその他の駒が置かれている。玉将を使うつもりはなかったようだ。
三木がその駒を見ているうちに砂になって消えた。
---------
最初のコメントを投稿しよう!