吾輩は猫ではない

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「で、如何ですか?先生」 「うん。許可しよう」 「えぇぇぇええ!?」 櫻島は見ず知らずの自分に住み込みで雇う事を許したこのお人好しに驚いた。 『松陰先生!!』 遠くで吉田の名を呼ぶ声が聞こえた。 三人は声の方へ向くと、そこには背の低い活発そうな狐目の青年と背の高い坊主の青年、色素の薄い少し癖っ毛の髪の青年とーー (うわっ、猫好き男!!) 猫好き、もとい黒い着流しの男ーー青年達が吉田の元に駆け寄ると、櫻島は見つからないようにサッと桂の背後へ隠れ、笠を深く被った。 櫻島は無駄と分かっていても、祈らずにはいられなかった。 (どうかあの厄介なのに見つかりませんように) だが残念な事に、逸早く黒い着流しの男に見つかってしまった。 笠を奪われる形で。 「頭隠して尻隠さずって言葉知ってる?」 着流しの男は櫻島の目線に合わせて身を屈めた。その目は獲物を仕留めるかの如くの目であった。 「最悪…」 着流しの男は櫻島に抱き着き、離したかと思ったら、襟巻きを掴み青年達の前へ引き摺り出した。 「ぐ、ぐぇぇえ…っ!」と櫻島は悶えつつ、皆の前で手放された時には目一杯に涙を浮かべ、青年達を見上げた。 すると青年達、おろか吉田も含めて絶句した。 ((((何だこの生き物は!?)))) 桂と黒い着流しの男以外の全員の心中が一致した瞬間だった。 顔を赤らめながら吉田は咳払いをし、青年達に紹介した。 「君達に紹介しよう。彼の名前は……えっと、何ていうんだい?」 知らないのかよ!!と言わんばかりの顔で皆が吉田を見た。 吉田は桂に目配せしたが、桂も「知らん」と言うように肩をすくめた。
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