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「兎に角。“もぎき”って、どうやって書くの?」
「数字の十の縦棒が跳ねて書く。ちなみに、木の両端をもぐから“もぎき”って言うんだ」
「おお!それは実に興味深いね!あ、申し遅れたけど、私の名前は三木京次郎だ」
「よろしく」そう言って三木は手を差し出したが、どう反応すればいいか分からない十は頭を掻いて首を傾げた。
「あ、そうか。“ここの人達”は分からないんだった。夢の中でもリアルなんだね。あ、これは手を握り返すのが挨拶なんだよ。はい、手を出して」
十は恐る恐るを差し出して三木の手を握った。
「よろしくね、十君。ま、夢だけど」
「あ、ああ。夢だけどな」
十は困惑した。
実に夢らしくないからだ。
それに、この三木は意味不明な単語を口にする。
夢なのに、自分に理解不能な言葉が飛び交うだろうか?ーー否。
夢ではないとしたら、一体何なのだろうか?
十はこれ以上考えても解決しないと思い、考えるのを止めた。
「十君は何歳?十七歳くらい?」
十は少し考えて言った。
「ああ。十七だな」
「いや、嘘でしょ。今考えてたじゃない」
「うるせぇな。てめぇが十七って言ったんだろうが」
十が苦笑をすると、一緒になって三木も笑った。
「とりあえず、何処か座りません?あの桜の木の下とかどうでしょう?」
そう言って三木が指差した木は、どの桜の木よりも大木であった。
二人はその木の麓まで行き、気の根元で腰を掛けた。
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