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「ここは綺麗ですね。一体何処なんだろ…」
「ここは俺の故郷だ」
「へぇ!で、何処なんです?」
「夢だったら分かるだろ?」
「いや、分からないから聞いてるんだけど…」
十は口を噤んだ。
先程から会話する相手が本当に夢の登場人物か怪しく思ったからだ。
すると突然三木は笑い出した。
「十君の心中を当ててあげよう。“本当にコイツは夢の登場人物なのだろうか?”ーーどう?当たってる?」
三木の言葉に十は驚いた。全くもって正解だったからだ。
だが、それこそ夢として当たり前の事。
自分が思っていること、想像したことを操れるならそれこそ夢だ。
「“しかし、まるでお互いがお互いを夢住人と思っている”これもどう?ーー摩訶不思議なことを言うけど…これは現実の人と人が同じ夢を見て会話をしているのだと思わない?」
十は眉間に皺を寄せ、何かを考えるが如く顎に手を当てた。
「三木さん。あんたは何処の人だ?」
「あれ、それ聞いちゃうの?多分十君が知らない場所だと思うよ。だから言わない」
そう言って三木は悪戯気に舌を出した。
十は三木を睨むだけですぐに川を見つめた。
「もしあんたの話が本当なら、お互いが敵か見方か分からないな。そうなる前にいっそうのこと殺してしまおうか?」
「何を物騒な事を言ってるの。君が私を殺せるわけないじゃない」
そう言っておどけて見せるが、十はただ口の端を上げて立ち上がり、腰に手を当てた。
すると、ないはずの刀が現れ、鯉口を切って刃先を三木に向けた。
だが三木は表情を変えず、素手で刃先を掴むなりそれを折った。
それには十も驚き、三木と刀を交互に見た。
「夢ですから」
したり顔の三木に腹が立った十は、力一杯込めて三木を蹴った。
「うげっ!いっったぁああい!!何すんのさ!?ーー…ん?」
三木と十の身動きが止まり、今何が起きたのかを懸命に考えた。
「「痛みを感じる…?」」
三木は何かブツブツと言い出し、蹴られた部分を摩りながら服を上げた。
ところが、そこは痣になっておらず、至って白かった。
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