過去の栄光

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「あれ、やっぱ痛くないや」 衝撃は確かにあった。だがしかし、痛みはない。 三木は不思議な気持ちになった。 十は折れた刀を投げ捨て、再び腰を掛けた。 「で、結局痛かったのか?」 「いや、衝撃だけ感じた。あれかな。たぶん寝返りうったときに何かに当たったのかも」 「けっ。何だそりゃ」 十は微かに笑った。 それを三木はジッと見つめていると、十は突如不機嫌な顔になって睨んだ。 「何だよ!」 「いや、何かよく見たら知り合いに似ているなと思って」 「ふんっ!こんな男前な奴も居るんだな」 十は皮肉を込めて言った。だが、三木はその皮肉に気付いているのか否か、普通に返答をした。 「そうそう。案外いるのよ“京都”に」 「京都…?」 十の片眉がピクッと動いた。 「お前京に居るのか?」 「さぁ」 十がまたもや腰に手を当て抜刀しようとしたが、それより早く三木が短刀を突き出した。 「君は短気だなぁ。短気は損気なんだよ?」 「煩い」 十は三木がしたように刃先を掴み折ろうとした。 しかし、刃先は折れるどころか指を切ってしまった。 驚いた十は手を引っ込めて、己の手を見た。 だが血は出ておらず、傷も塞がっり痕も消えた。 十は三木を睨み付けて言った。 「何で貴様のは折れないんだ」 「意思の違いじゃない?」 「意思?」 「そう。君は夢を見る時意識はあるかい?」 「たまにあるが…」 「そういう時、何時も夢を操ろうとしてる?」 「いや…ただ夢が覚めるのを待っているだけだ」 「それが問題さ。私は何時も操ろうとしているよ。今回もそう。刀が折れないように想像していたから折れなかった」 「よく見て」そう言って三木は手に持っていた短刀をいとも簡単に折って見せた。
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