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……浮かんできた傑さんの手をぎゅっと掴んで、引き上げる。
「行くぜ?」
……楓君の合図で顔を見合わせて。風に乗って学園の真上までくると、信じられない光景に楓君が眉をひそめた。
「………ひどいな。」
植物は拡大して、学園内を覆っている。
「…あぁ。コレは、放って置いても精霊が死ぬね。持ち主の性格歪み過ぎてる。……こんなに拡大してたら、影響受けまくりだよ。」
「………でもその場合。巻き込まれた奴も危ないけど。」
………じゃあ、ダメじゃん。
「どうすんの?」
「魔力転移が有効じゃないかな?」
「魔力転移?」
「傑と藤夜が媒体になって、魔力を吸い上げて違う時空に飛ばす。」
「傑さんが…………。大丈夫、なの?」
戸惑いで、手が震える。
……下からは、絶え間なく悲鳴が上がっているのに。
私は、もう。傑さんや藤夜を失うのが怖い。
「……躊躇ってる時間ないみたいだね。」
…そう言った傑さんは、地面に急降下し始めた。
それを追うように、藤夜も後に続く。
「傑さんっ!!藤夜!!」
「………僕と藤夜の命を預けるよ、朔。……僕等が大丈夫なうちに止めて?」
「…俺達は、朔を信じる。」
二人の背中が小さくなった。
…………もう、後には引けない。
唇を噛み締めた私は、覚悟を決めた。
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