†交流試合†

106/111
前へ
/239ページ
次へ
………音が止まるのと同時に、全てのスイッチを切った。 雑音が入って、影響を受けるのを避ける為だ。 ……窓の外には、雲の間に現れた異空間へと続く、空に浮かぶ濃いグレーから奥にいくほど黒なっていくる穴。 ……力を吸い上げる事で発生する風。 飛び交う桜と藤の花びら。 ………どうやら、術は成功している。 それからの私の行動は早かった。 内側から鍵がかかっている放送室のドアを開けて、外に出る。 ……廊下から聞こえ続けた音が、気になって仕方ない。 開けた瞬間。目に飛び込んできたのは、先輩の胸倉をつかんで狂ったように笑い続ける人物。  腕や足に青痣が見えて、目を見開いて…… 私は血がにじむのも構わずに、力いっぱいに唇を噛んだ。 …放送室の前には、壁に頭を打ち付けて意識を失った大地。 先輩は、あの細腕で… 魔力も切らして、駆けつけてくれたんた。 「…………先輩を離して。」 …思ったより低く出た声。…怒りで声が震える。 「………なんで来るのよ…、馬鹿。」 ……先輩の声は、細く弱々しい。 けど、どこかほっとしたような顔が…… 悲痛に歪む。 「逃げ…て?」 あぁ、どこまでも優しい人だ。 涙がこぼれる。 「………あぁ、僕の朔夜。来てくれたんだね。」 その声に気付いた人物は、先輩を地面に放り投げ… …………嬉々とした表情で此方に近づいてくる。 ……放り投げられた先輩がうめき声をあげ、力なく地面に叩きつけられたのを見て…… ……私の中の何かが音をたてて、切れた。        
/239ページ

最初のコメントを投稿しよう!

486人が本棚に入れています
本棚に追加