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†プロローグ†
「……麗しい、姫。…泣かないで?どうか、貴方だけでもお逃げ下さい」
…その人は、そう言って私の頬をするりと撫でた。
「…サザンド…」
…その背中から流れる大量の血に血の気を失った頭。…それでもしっかりと首を横に振る。
「いいえ。私も王族。民や臣をここまで怒らせた責任があるわ」
…その日、謀反があった。
国の国庫が枯れた原因の一端には、私が大国に嫁ぐのを渋った事にもある。…いけないと知りつつも望んでしまった。
好きな人との幸せな未来を…
…その罰が、これなのだ。
…両親はすでに打たれた…。
最後まで騎士のサザンドは私を逃がそうと刀をふるっていたのだが、多勢に無勢。
横から刺されて倒れた彼を抱き起こすと、床を染める深紅に、抱きしめた腕が震えた。
「…愛しています。姫…。来世で会いましょう?必ず迎えに行きます」
「私も愛しているわ。サザンド。貴方が迎えにくるのを来世で待っているわ」
…その瞬間、無情にも刀が振り下ろされる。
…こうして、二人は引き離された。
…来世に思いを託して。
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