逃走劇の始まり

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下駄箱+手紙(可愛らしい装飾付き)=? この方程式から導き出されるのはもうひとつしかない。そう勝手に決め込む 「どれどれ……ふむ、町外れの廃工場か……そんな辺境に呼び出すなんざ相当のシャイガールと見た」 ニヤけている顔を隠そうともしないで校門を通り過ぎる。道行く人が顔を伏せているのはなんでだろうな と、いうわけで30分かけて到着したのは決められていた廃工場。鉄の匂いが充満し、さらに海が近いことで磯の香りもプンプンする 「Tー21号倉庫……ここか」 廃工場地帯は広い。金網が設置され普段は立ち入り禁止なのだが、なぜか今日はそれが正面から開いていた 工場は、倉庫のようになっており、一つ一つに番号で類分されている。そして今目的の場所だ 「さぁてどんな娘だ?」 なんの心配もせず、倉庫の重々しい扉を開け放つ。かっこよく決めにいき、両手をバーンと開いたが、勢いよく開きすぎて、むせた 「ゴホッゴホッ………埃っぽ」 しかしここでカッコ悪い姿を見せるわけにはいかない。だから直立不動で叫ぶ 「出てきなシャイッ娘!手紙に書いてあった通り来たぞ!」 ふふん、決まった そう思った。帰ってきた言葉は女の子特有の高い声 ではなく 「ご苦労さん、わざわざ狩場に来てくれた狐さんよぉ」 野太い男の声。この時点でようやく気づく (嵌められた……だと……?!) 嵌められたという現実に気づくが時すでに遅し。暗い倉庫でもわかるぐらいの人数ががやがやと集まってくる 「げひゃひゃひゃひゃひゃ!お前なんかにラブレターが来るわけねぇだろぉ!」 「………」 『こういう事態』には慣れていた。だから嵌められたことなど忘れて冷静に状況を分析できる え?なんで慣れているか?………聞くな 「てめぇらは……」 「げひゃひゃひゃ……あぁ?」 フツフツと湧き上がってくる感情。抑えることのできない激情 「てめぇらは純然たる男子高校生を弄びやがった……」 「な、なんだぁ?」 俺が俯きがちに静かに言葉を発すると、そいつらは少し後ずさりする。だが、もう遅い 「こっからは、狩りの時間だ」
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