心 愛 ~高校2年①

11/11
前へ
/47ページ
次へ
イッたあとの脱力感から抜け出せず、ベッドに寝そべったまま目を閉じていた。 「大丈夫か?」 「うん」 「また、風呂入る?」 「いや、そろそろ帰らないと時間がヤバい」 「じゃあ、制服もらってくるな」 義信は、俺の体を拭き、服装を正してくれた。 腹を冷やさないように布団までかけていってくれる。  優しくて、頼れて、大好きな義信だけど、どうしても「好きだ」と、言葉にして言えなかった。 もし、言葉にして伝えてしまったら…。  義信は、高校を卒業した後、関西に戻ってしまうのだろうか。  いつまで傍にいてくれるのだろうか。  不安なことばかり考えてしまう。 「雨止んだみたいだな」 義信が制服を持ってきてくれた。 「よかった。学校まで、また濡れるのは嫌だし」 ワイシャツに腕を通し、ボタンを留める。 「わいにやらして」 ボタンを一つ一つ、留めていく義信を見ていた。 今はすぐ触れられる場所に義信がいる。 ―――――今が幸せなら、それで良いか。  全部、ボタンを留めたくれた義信にお礼のキスをした。 いつもより遅く連絡を入れたせいで、橘に小言を言われた。 「勉強も大事ですが、お夕飯に間に合うようにしてください。待っている者がいるんですから」 「わかった」 車の後部座席に座るとき、穴に異物感を覚えた。  指1本しか入れられなかったはずなのに、気になってしまう。 「明日は、大木の叔父が午後1時にいらっしゃるので、学校は早退してください」 「どこか出掛けるのか?」 「買い物に付き合って欲しいそうです。買い物の後は懐石料理でも…と、仰っておりました」 「たまには、洋食が食べたい」 ボソッと本音を漏らす。 「洋食はカロリーが高いので、年配の方には無理ですよ。美味しい洋食店探しておきますので、明日は我慢して和食を食べてきてください」 「デザートの美味しいところにしてくれよ」  運転席に顔を乗り出した。 義信とケーキ屋巡りをしてから、甘いものに目がなくなった。  とくに、ふんわりチーズケーキが大好物だ。 「かしこまりました」 橘は、優しく微笑んだ。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加