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天蓋付きのベッドに少女が横たわる。
窓のカーテンを全て開けながら、ブィナは主人に朝を告げる。
「目覚めの紅茶はシルシア地方のオレンジペコー、砂糖はいかがなさいますか?」
「…いらない。おはよう、ブィナ」
上体を上げた主人は、眠たげに目を擦りつつ、それに答える。
その声は、少女には低く、首の喉仏から主人が少年であることを示していた。
「学校の制服はこちらに用意してます、若様。朝食は、席に着き次第、お出しします」
「…」
主人は、ブィナの目の前で着替え始める。
崩れた寝間着に隠れていた肌が露わになる。
健康的ながら淑やかな肌が晒される光景は、劣情と信仰のどちらも催すものだった。
しかし、ブィナはその光景に見慣れた喧嘩の様子を見るような、表情を向けた。
主人は、それが気に食わないようで、口を尖らせていた。
「ブィナ、いつも言っているけど、僕のことは名前で、クオンって呼んでって言ってりよね?」
「申し訳ありません。私のような端女が、若様を呼び捨てにはできません」
「業務命令って言ってもきかないくせに」
「体面を崩すような命令をきく程薄い忠誠心は持っていません」
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