はじまりは最低

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全ての思考が停止する臭いというものがある。 それを通り越した先にあるのは、軽い失神だ。 「どうしたの」 優しげな顔立ちの色の白い男が、潰れかけた長屋のような建物から現れた。 内股。 この人すごい内股。 そして目にしみる異臭は、耐え難いほどに強くなった。 横に居た友達の瑞希を見ると、これはもう無様に地面を這っていた。 逃げよう。 俺は踵を返そうとして失敗した。 瑞希の手が、俺の足首を掴んでいたからだ。 「入部希望?」 内股が涼しげな声で聞いてきた。 俺のシャツに掴まりながらようやく立ち上がった瑞希が、頷いた。 バカ、離せ離せ。 俺はジタバタしたが、内股がにっこり笑って俺の手首を掴んだ。 ひょろりとして、さほど大きくもない男の力ではない。 俺と瑞希は、為すすべもなく部屋へと引きずり込まれた。
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