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午前四時二十分。
すでに東の空が明るく染まり始め、偉そうに一日の始まりを告げている。暗闇に隠れていた不都合な現実を照らし出されるようで不快な気分になった。
(明るくなる前に帰ってくるべきだったな)
そう後悔しながらマンションのドアを開けると、出かける前に食べ残したカップ麺の臭気が、慶太の帰りを待っていたかのように一気に鼻を掠め通り抜ける。
生活感の無い白と黒で統一された殺風景なワンルーム。
虚しさに拍車がかかり、深いため息を吐いた。
慶太は大学を卒業した年に、父親が経営しているデザイン会社の子会社を任されたが、三年経ち二十五歳になった今では週一回程度しか会社に顔を出さなくなっていた。
それでも、その子会社はなんの問題もなく回っているらしく毎月給料だけは滞りなく振り込まれていた。
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