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俺は謝った。とにかく、謝った。間違えて、姉貴のプリンを食ったことまで謝りかけたが、先輩はいつものだらしない恰好で姉貴のぶりッ子ファッションとは南極と赤道ほどの温度差があった。これで姉貴と先輩を間違えたら、先輩に失礼だ。
「あの・・・来てくれてありがとうございます。」
「いや、散歩したい気分だったから。」
散歩なんて趣味が先輩にあるはずない。好きなことは絵を描くことと読書と寝ることだ。そして、嫌いなことは運動、勉強、他人との会話。身内は他人には入らないらしい。クラスメイトは他人。部員も半分は他人だ。俺はギリギリ他人じゃない。俺といると、おもしろいからだそうだ。
「行くぞ。」
先輩は足早に公園のアスファルトを歩いていく。いつでも競歩をしているような足取りに俺はいつも苦戦する。一緒に歩けば、カップルにも見られるだろうに、俺も運動は苦手だ。とても、先輩のなれた競歩に追いつくことが出来ない。
「待ってください!」
「聞くが、桜にそう言って満開を待ってくれると思うか?」
「・・・ないです・・・」
相変わらずそっけない返事でも俺はめげない。歩幅は違えど、これはデートなのだから。初めて先輩と校外で会っているのだ。夢みたいだ。まさか、これは夢?顔をつねると、痛かった。
「しかし、誘うならもっと早い段階で誘って欲しかった。」
「えっ!」
まさか、先輩も俺と一緒にデートしたかった、
「見頃を超えているじゃないか。もう、葉桜が多いぞ。」
「すいません・・・」
なんだ、桜の見頃の話か。見事に予想が外れてがっかりしていても先輩は勝手に先を行く。もしも、本当にもしもの話、先輩と付き合えることになったら絶対俺が先に道を進もう。俺があなたを守りますから・・・。いや、その前に運動を出来るようになって先輩を追いつき追い越さないと・・・。
そんなこと、俺に出来るのか?
「どうした?」
「いえっ!なんでもありません!」
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