桜の日

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 「制限時間は五分間。よーい、どん!」  俺はすぐ桜の木の下に立って構えた。運動音痴の俺でも、こんなたくさん降っているんだ。しかも、ゆっくりと。こんなの朝飯前っ!  「はっ!」  目の前を通り過ぎる桜に手を伸ばすが遅い。大丈夫、こんなにたくさん落ちてきているんだ。どれか一つぐらいは、手に取れる。  しかし、取ろうと手を伸ばせば手元で大きく変化する。手で風の抵抗を作ってしまっているんだ。もう少し引きつけてシュバッと・・・  「なぁ、私のどこが好きなんだ?」  「へっ!?」  手元が傾いて花びらがまたもや逸れる。俺の後ろで先輩は神妙な顔で立っていた。これは言った方がいいのだろうか。言わないと捕まらない桜の花びらのようにチャンスを逃しそうだ。だから、俺はおもっていたことをはっきり伝えた。  「先輩の世界が好きです。」  「私の世界?」  「はい、」  光を持つと同時に闇を手にする、不思議な世界。足を踏み入れたら、闇に引きずり込まれてもう戻ってこれなそうだけど、頭の上にはいつも光が照らされている。光と闇の中間の世界。  「先輩の世界はすばらしいです。なんか、言葉にしづらいですが。   不思議と見入ってしまう。あのライトとブラックの使い方が・・・・」  「それは、単に私の絵が好きだということじゃないか?」  「違います!俺の好きなのは先輩です!」  言ってしまってから、俺は体中が熱くなるのを感じた。このまま燃えて灰になるんじゃないかってほど、体の内側が熱い。俺の気持ちは先輩に伝わっただろうか。それとも、絵じゃないと伝わらないのか?  先輩は絵の構想を練るような思案顔から、唇を開いた。  「残り三分。」  「えぇ!」
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